利根地方の民話
お不動様のねずみ こうがい堀 雀と婆っさま 猫と和尚さん 月のうさぎ
 
▲▲ 読みたいお話をウエから選んでください。
 
  利根郡地方の民話  第1話

                       お不動様のねずみ

ねずみ  
 

群馬県片品村の立沢と須賀川の境に不動沢というところがあります。今は、バスが通って「不動沢」と言う停留所
なっていますが、昔は、けものみちのような道があるだけで、淋しいところだったそうです。
 
夏の終わりのある時、私の父が隣村の下平へ用事があって出掛けたときの話です。
用事が終わったあと、この近在にあるたった一つの遊郭で、遊びすぎてこの近道を急いで帰ってきたのです。だいぶ
秋の気配が濃くなって、少々日が詰まったのでしょう、不動沢にさしかかるころには、だいぶ暗くなってしまいました。
   
 「この調子だと家に着く頃は真っ暗だな、夜道に日は暮れねえや。煙草でもつけて一服しようか。」
と、キセルに刻み煙草をつめると、不意に目の前に小さな<火のかたまり>が出てきました。
 「やあ、すまねえな。」
と礼を言って、キセルを近づけると、」からかうように火がキセルからすーっと逃げたのです。
 「あれっ、酔っぱらってるんだべか?」とキセルを火に持っていくと、また、すーっと逃げたのです。
 「こりゃ、狸の仕業げな、よーし、化かされたふりして、とっかまえてやんべえ。」と、た火に近づくと、案の定その先
へ逃げたのです。
こんな事を何度も繰り返している内に、とうとう不動沢の水辺まで追いつめました。
 「さあどうだ、参ったか、謝れ!」 すると、<火のかたまり>は、歩くように水の上をちょんちょんと渡り、向こう岸から
誘うようにチカチカついたり消えたりしています。ここまできては引き下がるわけにはいきません。
 わずか二,三歩の幅ですから、着物の尻をはしょって、沢へ足を入れて、一歩踏み出すと、つるっと滑って、あっという
間にびしょ濡れになってしましました。すると火はパッと消えてしまいました。気が付くとそこは、不動様でした
帰ってから人に話すと
 「それは不動様のねずみだ。よくねえ遊びなんぞするから、沢の水で、身を清められたんだっぺ。」

 この話は片品村須賀川に住む星野公夫老人が、子供の頃炉端で父親から聞いた話を、丹念に大学ノートに
書き貯めたものである。